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fjsmu(ふじしむ)

fjsmu(ふじしむ)

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鮮やかで優しい色合いと、アナログ風味の厚塗りスタイルのイラストが特徴的なfjsmuさん。最近では『VISIONS 2024』への掲載や、「第49回 美術の祭典 東京展」のコミックアート部門の銀賞を受賞されるなど、精力的に活動されていますが、なんとデジタルイラストを始めた頃にFireAlpacaを使ってくださっていたとのこと。今回は当サイトの掲載用に描き下ろしていただいたイラストのメイキング、イラストレーターとしてのfjsmuさんについて、いろいろ質問をさせていただきました!

「夏」
メイキング

ラフ

「夏」fjsmu(ふじしむ)イラスト ラフ

色合いや配置を考えながらざっくりと描いていきます。この段階では形の正確さよりも、全体的な色のイメージをつかむことを優先しています。

線画

ラフ用のレイヤーフォルダの不透明度を下げ、その上に新規レイヤーを作成して線画を描いていきます。厚塗りの目安にするための線なので、一般的な線画のようなきれいな線ではなく、「下描き」に近い形です。ラフの段階よりも形の正確さを意識して調整していきます。

主に使用したブラシ

「鉛筆(デフォルト)」
「夏」で主に使用したブラシ「鉛筆」

色塗り

ラフのレイヤーフォルダの不透明度を戻してその中に新規レイヤーを作成し、ラフの画像からスポイトで色を拾いながら線画に沿って塗りを整えていきます。基本的に人物や背景などでレイヤー分けをせず、すべて同じレイヤーに塗り重ねています。オーバーレイなどをかける場合はいったん専用のレイヤーを作ってかけ、さらにその上から新規レイヤーを作成して塗り進めていきます。ある程度塗りが進んだら線画のレイヤーは非表示にしています。

主に使用したブラシ

「エアブラシ(デフォルト)」
「夏」で主に使用したブラシ「エアブラシ(デフォルト)」
「No.287 かすれアクリル」
「夏」で主に使用したブラシ「No.287 かすれアクリル」
「とげ(デフォルト)」
「夏」で主に使用したブラシ「とげ(デフォルト)」
「No.374 カスレ平筆水彩」
「夏」で主に使用したブラシ「No.374 カスレ平筆水彩」
「No.288 でこぼこアートペン」
「夏」で主に使用したブラシ「No.288 でこぼこアートペン」
「No.311 カスレ角ブラシ」
「夏」で主に使用したブラシ「No.311 カスレ角ブラシ」

fjsmu
インタビュー

野生のドーナツ(社内イラストレーター)

今のフリーソフトってすごいんだなって思いました(笑)。

fjsmu(ふじしむ)インタビュー画像1

——今回依頼でFireAlpacaを使っていただきましたがどうでしたか?

初めてFireAlpacaを使ったのがもう8年くらい前なんですが全然覚えていなくて。ガサガサ系のブラシをよく使うんですけど、フリーソフトだとブラシの質が良くないのかなってイメージがありました。ただ、今回使ってみて普段使っている Photoshop と遜色なく、ブラシを選んで色を置いたときにすごくいい感じに置けたので、今のフリーソフトってすごいんだなって思いました(笑)。

——それは嬉しいですね! おすすめの機能みたいなのはありますか?

おすすめは「トーンカーブ(※)」と「アンシャープマスク(※)」ですかね。普段それで最終調整をしています。
※メニュー > フィルタ内にあります。「トーンカーブ」は色の補正、「アンシャープマスク」は輪郭をはっきりさせます。

fjsmu(ふじしむ)インタビュー画像2

——アンシャープマスクを使うのはブラシの質感をはっきりさせるためでしょうか?

それもあるんですけど、好きな作家さんがやってたので、それを真似て(笑)。くまおり純さんという小説の表紙をよく描いている絵の上手い方がいらっしゃるんですけど、その方の画集のメイキングでアンシャープマスクを使う方法が載っていました。僕自身もガサガサした質感の絵が好きなので。

——なるほど、ありがとうございます。他に「ここちょっと直した方がいいぞFireAlpaca(笑)」という部分がありましたらお願いします。

これは要望なんですけど、トーンカーブなどはレイヤーに対してかけられるとすごく助かります。FireAlpaca では全部レイヤーを統合してからフィルタをかけていましたが、毎回サイズを変更するので、調整レイヤーがあると嬉しいです。

普段の自分の絵柄をFireAlpacaでどこまでできるか。

fjsmu(ふじしむ)インタビュー画像3

——今回のイラストについての質問に移らせていただきます。すごく素敵なイラストをありがとうございました! 「すごい、影の色にこんな明るいブルーを使っているんだ」と思いました。

ありがとうございます。そういう色の使い方が好きですね。

——今回のイラストに含めた想いやこだわりみたいなものがありましたら教えてください。

ホームページのリニューアルに使われるということだったので、とにかくインパクトがあるというか、見た瞬間に「すごい!」と思わせるような絵がいいのかなと思い、鮮やかで綺麗なイラストを目指しました。あとは「フリーソフトでもこんなの描けるんだよ!」と、普段自分が Photoshopでやっている感じを全力で、どこまでできるかを考えながら描きました。

——このような田舎の風景をたくさん描かれていますね。

夏の風景をよく描いてますね。描き慣れているというのもあるんですけど、田んぼが好きなんだと思います(笑)。

——今回使ったブラシについてはいかがでしたか?

どれも良かったんですけど、「カスレ角ブラシ」と「カスレ平筆水彩」の2つをメインで使いました。「カスレ角ブラシ」は色ラフから使ったブラシで柔らかく色が混ざる感じでしたね。
「カスレ平筆水彩」の方は「カスレ角ブラシ」よりもちょっと固いブラシが欲しいとき、シルエットをしっかり出したいとか、柔らかいところと固いところを出したいときに使いました。
あとは右側の道で「とげ」ブラシです。そこだけにしか使ってないんですけど(笑)。普通のブラシだけだと情報量が足りない感じたので何かないかなと思って。「とげ」でランダムに交差する線が出るブラシだったので、それを使っています。
カスレアクリル」と「でこぼこアートペン」は「カスレ角ブラシ」と同じような用途で、少し柔らかみを出すときに試しながら使いました。

fjsmu(ふじしむ)インタビュー画像4

——制作過程の動画を見ると、人物も背景も基本全部同じレイヤーに描いているようですね。

ほぼ1レイヤーで、たまに「オーバーレイを足したいな」というときには、描いているレイヤーの1個上にオーバーレイのレイヤーを作って、その上にまた通常のレイヤーを作って上から塗りつぶすみたいなことをしています(笑)。

——筆運びが速くて「迷いがない」という感じでした。イラストの制作時間はだいたいどれぐらいでしたか?

そうですね、筆は速い方だと思います。制作期間はだいたい2、3日でほとんど描き終えて、あとは1日ずつ微調整を繰り返す感じですね。線画は多分1時間かかっていない、まあ線画っていうほどのきれいな線ではないんですけど。ほとんどの時間は色塗りですね。時間換算だと10〜15時間くらいです。

絵を描くのが好き、上達するのがすごく楽しかった。

fjsmu(ふじしむ)インタビュー画像5

——次に、イラストレーターとしての質問です。普段の作業環境を教えてください。

板タブを使っていまして、wacomの「intuos pro」のMサイズです。それと「TourBox NEO」という左手デバイス、EIZOの「FlexScan」というディスプレイです。モニターは3台で、二つ目は資料用、三つ目はYouTubeとかを流す用です(笑)。WindowsでソフトはPhotoshopです。

——イラスト歴についてお伺いしたいのですが、絵を描き初めたのはいつぐらいからですか?

描き始めは小学校の頃ですけど、そこから空いて、2015年あたりからpixivに上げています。大学の友人が絵を描くのが好きで、色々なイラストレーターの絵を見せてもらって。その友人がきっかけで、最初はスマホでドット絵を描けるようなアプリを使ってそこから始めました。その後に小さい板タブを買ってFireAlpacaを使ったのがデジタルイラストの始めだったと思います。

——いつ頃からプロのイラストレーターになりたいと思うようになったんですか?

最初はプロになるとは全く思っていなかったんです(笑)。2017年の就活の時にゲームのデザイナーかブログラマーになりたいと漠然と思っていたのですが、就活があまりうまくいかずで。そのときにイラストレーターなりたいと思ったのが最初ですかね。結果的に普通のプログラマーになりましたが。その後も絵を描くのは続けていて、2020年くらいからお仕事をいただけるようになったりして、やっていた仕事もあまりうまくはいっていなかったので「じゃ、イラストレーターになるか」と(笑)。

——就職しても絵を描き続けることって結構大変だと思いますが、ずっと描き続けたモチベーションはなんでしょう?

本当に絵を描くのが好きで、上達するのがすごく楽しかったからですね。

——(今まで上げた絵の一覧を見て)レベルアップしていくのがすごく分かります! 最初は人物メインだったのがだんだん背景も描かれるようになってますね。背景を描くのって難しいと思いますが、きっかけはありますか?

背景を描くようになったのは好きなものが移っていったというか。厚塗りだと背景って結構入りやすいと思うんですよね。

——なるほど。厚塗りのスタイルになったのはいつからですか?

今のスタイルは後々できるんですけど、荒く色を重ねるみたいなのは初期の方からあったと思います。そうすると背景とかも比較的入りやすかったりして、人物メインで背景をちょっと描くみたいなのから、どんどん背景に挑戦していきました。

——絵の上達のために心がけていることなどはありますか?

僕はあまりスケッチとかはやらず完成するイラストばかり描いているんですけど、その中でも毎回必ず1個は今までやったことないことをやるというか。普段使っていないモチーフを使うとか、他の人の絵を参考にして使ったことのない色味を使ってみるとか、本当に小さいことでもいいので絶対1個はやることをずっと心がけていますね。

——イラストのお仕事の際にとくに心がけていることは何ですか?

クライアントさんに喜んでいただく、満足していただくというのはもちろんなんですけど、自分でも納得できるように個人制作と変わりなくいいと思えることは大事にしています。なかなかそれを達成するのが難しいんですけど(笑)。クライアントさんの「こうしてください」というのがあるので、個人制作みたいに自分の自由にできる範囲が狭まりますし、難しいんですけど、その中でもちゃんといいと自分で思えるものを大事にしています。

——ありがとうございます。普段描いているイラストとは別でもいいんですけど「こういう絵が好きだな」っていうのはありますか?

印象派のスタイルが好きで、色味とか影響を受けています。あまり詳しくはないんですけど(笑)。中国とか韓国のイラストレーターの方たちは鮮やかな色使いがめちゃくちゃ上手いので参考にさせていただいています。

——イラスト以外でも好きな作品、漫画、アニメ、小説、映画などはありますか?

『東方プロジェクト』という同人ゲームがありまして、本当に8年、9年くらい二次創作をしています。舞台が長野とかなので自然とも合いますし、キャラクターデザインもすごくいいなあと。その雰囲気などを含めてすごくいい作品ですね。
あまり映画や小説を見ないんですけど、最近また音楽を聞いていて「ヒトリエ」というロックバンドをよく聞いています。もともと楽器をやっていまして、高校の時は軽音楽部でした。最近もちょいちょいギターを弾いたりしていて。ロックとか好きですね。もともと創作は音楽の方が先で、ボカロの曲とかを作っていました。

自分自身と向き合って、楽しく絵を描くことが一番大事。

fjsmu(ふじしむ)インタビュー画像6

——イラストを描く時のアイデアの出し方などについてお伺いしてもよいですか?

アイデアがよく出るのは散歩している時が多いですね。散歩はすごく好きで、雨が降っていなければ毎日しています。田んぼがあるところをよく歩くんですけど、歩いていると思考が回りやすく、今自分がどういう感情、状態なのかが分かるので、そこで見たものとか感じたものを「じゃあこれを絵にしてみよう」と。逆に描いていて行き詰まったからちょっと散歩して気分転換することもあります。散歩しすぎてるって思うくらいです(笑)。体を動かす、外の空気を吸うとか太陽の光を浴びるっていうのはかなり大事だと思いますね。

——生活リズムとかも規則正しい感じですか?

ああ〜、最近はちょっと崩壊してるかも(笑)。最近は散歩が23時とか、日中寝てて深夜作業してるみたいな(笑)。

——イラスト制作で大変だった経験、悩んでいることなどがありましたら教えてください。

イラストレーターとして独立して、何も後ろ盾がない、イラストレーターの知り合いもいない中でやってたので、どうすればいいのかなと。今もそこはまだ分かっていないんですけど。でも幸いなことに仲良くしていただけるイラストレーターの方も少し増えて、話をして情報をいただくことも増えてきています。

——技術的な部分で悩んだり、作風について「これでいいのかな」と迷った時期ってありましたか? イラストを描く人って「絵柄が定まらない」とかの悩みをもっている人が多いと思いますが。

僕はあまり自分の絵柄とかを気にしたりはしてないんですけど、常に「納得のいかなさ」みたいなものはありますね。多分みんなあると思うんですけど(笑)。それが特に仕事になると「そういうわけにもいかないな」っていうのがあって大変ですね。

——あとはSNSの評価とかにも左右される人は多いと思いますが、そういうのと折り合いの付け方、「思ったほど伸びなかった」とか悩みをもったことってありますか?

それはありますね。ただ、SNSで見ていただけるようになってから気づいたんですけど、伸びてもたいして自分の絵の質は変わらないというか。「たくさんの人に見ていただいてフォローされたら仕事がいっぱい来るんだ」みたいに思っているふしがあったんですが、閲覧数が伸びても一人で黙々と描いていることには変わらないっていうのに気づいて。あんまり期待してもしょうがないなと思い始めてから、簡単なゲーム感覚というか、他人の絵とはでなく自分の絵で比較して、「この絵は受け入れやすかったんだ」とか「この時間帯に上げると伸びるんだ」とか、そういうのだけ考えるようになりました。

——自分より上手い人に出会って「もうイラストやめようかな」みたいな悩みもよく聞きます。

僕はあまり「やめよう」と思ったことはないですね。描いたり上達するのが好きなので、すごい絵を見たら、「この人の絵柄ちょっと真似てみよう」とか「研究してみよう」と思って、それがモチベーションになったこともあります。
pixivやPinterestでイラストを見ていて上手いイラストを見ると、やっぱりちょっと比べちゃうことはありますが(笑)。そうしないように心がけています。

——イラストレータとしての今後の目標とか「こういうイラストに挑戦してみたい」というのはありますか?

今後の目標として、独立して1年くらい経っているんですけど、まだバリバリやれてるというわけではないので、お仕事をもっと増やして活躍できるようにはしていきたいですね。
挑戦してみたいイラストについては、書籍の装画をやりたいですね。いつか教科書の表紙をやりたいので、そのお仕事が来るように頑張ろうと思っています。イラストの技術的な目標は、引き続き同じペースで頑張っていきたいです。

——新しい作品を上げるペースが結構速いですよね、そのペースにこだわる理由とかあるんでしょうか?

作品を作るペースというよりかは向き合うペースですかね。1つの作品に時間がかかる・かからない関係なく、同じモチベーションで向き合えたらいいなと思います。投稿ペースが落ちることもあるかもしれないですけど、そのときは自分の至らない技術のところを集中して練習する期間を作るというか。そういう意味でのペースですかね。練習も含めて、モチベーションを落とさずに毎日向き合うようにしています。

——最後に、これからイラストレーターを目指す方へのアドバイスがありましたらお願いします。

僕自身がそんなにバリバリのイラストレーターじゃないのでアドバイスとかおこがましいですが(笑)。ゲームの背景、アニメの背景を描きたいとかやりたい仕事が明確な人や、目標にしている人がいる場合、その人がどういう経緯で成功したかを分析すれば自ずと道が見えると思います。僕みたいに好きで描いていて成り行きでなったタイプの人は、あまりイラストレーターっていう職業に固執しない、意識しない方がいいのかなあと思っていて。何が好きなのか、どういう絵を描きたいかなど自分自身と向き合って、楽しく絵を描くことが一番大事だと思います。

——聞きたいことは以上になります、本日はありがとうございました!

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