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加藤オズワルド

加藤オズワルド

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広大な世界観を感じさせるファンタジー風景を得意とするブラジル・サンパウロ出身の加藤オズワルドさん。ポケモンカードのイラストや教本、映像作品など商業分野で長く活躍されているだけでなく、コミティアやコミックマーケットなどでも精力的に作品を発表し続けています。今回は加藤さんに、イラストレーターになるまでの過程やイラスト制作に対する姿勢について、たくさんお話ししていただきました!

「北極点」
メイキング

ラフ

「北極点」加藤オズワルドイラスト キャラ設定 ラフ

「冬の風景」というテーマを「寒い場所」のイメージまで広げ、北極点に文明があった世界を想像して描いてみました。

ラフ・線画

ラフの段階で色を置きながら、イメージに合う構図を探します。その後、ラフの線を整えながら茶色の「クレヨン」で線画を描いていきます。

主に使用したブラシ

「ガタガタアクリル」
「北極点」で主に使用したブラシ「ガタガタアクリル」
「クレヨン」
「北極点」で主に使用したブラシ「クレヨン」

着彩

ラフを元に細部を塗り込んでいきます。通常の「かすれアクリル」と、混色しやすいようにカスタムした「かすれアクリルmazari」を主に使い、細かいところは「もさもさ鉛筆」で塗っています。オーロラはグラデーションを綺麗に作るために、モノクロで描いてから合成モードを「スクリーン」に変更しました。最後に「加算・発光」レイヤーに「エアブラシ」で光の効果を入れています。

主に使用したブラシ

「かすれアクリル」
「北極点」で主に使用したブラシ「かすれアクリル」
「かすれアクリルmazari(カスタムブラシ)」
「北極点」で主に使用したブラシ「かすれアクリルmazari(カスタムブラシ)」
「もさもさ鉛筆」
「北極点」で主に使用したブラシ「もさもさ鉛筆」
「エアブラシ」
「北極点」で主に使用したブラシ「エアブラシ」

加藤オズワルド
インタビュー

インタビュアー:野生のドーナツ(社内イラストレーター)

「なぜ無料なのか?」というのが率直な感想でした

加藤オズワルドインタビュー画像1

——まず、FireAlpacaについての質問です。今回FireAlpacaを使ってみていかがでしたか?

まず驚いたというか、「なぜ無料なのか?」というのが率直な感想でした。無料だからクオリティが低いというわけではなく、機能的にも品質的にも全然仕事に使えるレベルだと思いました。無料版の時点で機能が充実しているので、逆に有料版になったらどれだけすごいのかが見えなかったくらいでした。

——あってよかった機能や、おすすめの機能などはありましたか?

ツールや特殊な操作という部分では突出したものはなかったですが、仕事に使える機能は全部揃っていて、描こうと思えばどんな絵でも描けると思いました。特にCMYKのサポートがあるのがいいですね。仕事で印刷物を扱うときは確認だけでもCMYKモードがないと厳しいのですが、無料のソフトでは搭載されていないことが多いので。

——次に、今回描いていただいたイラストについての質問に移らせていただきます。今回依頼したイラストを制作する際に意識したことやこだわり、こめた想いなどについて教えてください。

冬らしい冬がない環境で生まれ育ったので、「冬の絵」というテーマが最初はイメージしにくく、ステレオタイプな冬の風景になるのを避けるようにしました。「冬」に限らず「寒いところ」のイメージまで広げてもいいのかなと思ったので、「北極点にもし大陸があって、文明があったら」というのを想像しながら、真昼にオーロラ、晴れているのに雪が降っているというありえない光景を散りばめて、不思議な光景を描けたらいいなと思いました。 

——使ったブラシについて教えてください。

もともとやっていた油絵に近い感覚で描ける、筆のタッチが出やすいブラシを使うことが多いので、今回もそういったブラシで、絵の上でグラデを作ることができるようにカスタマイズしたりしました。鉛筆もなめらかなものよりはテクスチャがかかっているものが好みなので、特殊な「もさもさ鉛筆」や「クレヨン」を線画に使っています。

——おおよその制作時間を教えてください。

ラフは1時間かかっていないくらいで、ラフの状態から5〜6時間くらいで完成したと思います。

加藤オズワルドインタビュー画像2

アイデアは最低でも100は考えようというつもりでスケッチを重ねます

——イラストレーターとしてのご本人に関する質問に移らせてせていただきます。まず、普段の作業環境について教えてください。

今使っているのはマウスコンピューターの32GくらいのゲーミングPCです。元々は筐体から組んでもらったものを使っていたのですが、最近ではグラフィック面でコスパがいいものを求めるとゲーミングPCがよかったりするんです。もし仕事中に壊れても、今はどこにでも売っているのですぐに買い換えられるというメリットもありますね。
ソフトに関しては、仕事ではPCでClipstudioPaint、iPadでProcriateを半々くらいで使っています。ペンタブはwacomのMサイズの板タブを10年くらい使っていて、モニターはEIZOの27インチのものを1台で、資料を見る時は画面の1/3くらいに表示しています。あとは特殊なものとして、デザイナーズチェアの「トイチェア」を使っています。硬い椅子なのですが意外とフィットしてしまって。本来は外置き用で丈夫なので、もう10年くらい使っています。

——イラスト歴(絵を描き始めたのはいつ頃か、今のスタイルになるまでの変遷など)について教えてください。

絵を描き始めたのは小学生未満からですが、仕事にしたいなと漠然と思い始めたのは小4の頃です。高校の美術部で油絵を始めて美大に行きたいと思ったのですが、普通の進学校だったこともあって進路相談のノウハウがなく、美術予備校の存在を知ったのも3年の夏をすぎてからだったので間に合わず、自分でいろいろ調べて東京工芸大学に進学しました。
ちょうどこの頃に映画が好きな友達ができて、映像に興味をもつようになり、工芸大では映像の勉強をしていました。3回生の時に当時は珍しかったデジタル分野のゼミに進み、そこで初めてペンタブを使ってPCで絵を描くようになりました。その頃webデザインの会社にアルバイトで入っていたのですが、絵が描けることを伝えたら初めて有償の依頼をもらうことができ、そこからはフリーランスで仕事を受け続けています。
卒業後は研究生として大学に1年残りつつ映像の仕事を受け、名古屋の大学で4年ほど助教の仕事をしたりしました。東京に戻ってからは10年以上映像の仕事をしていましたが、映像の企画を出す際に漫画の方が伝わるので漫画を描き始め、描いたモノクロの漫画をコミティアなどのイベントに出すようになりました。その時に購入者の方からカラーのイラストはないのかと聞かれることがあったので、カラーの絵を描き始めてSNSなどにアップし始めたら、イラストの仕事がメインになっていきました。

——自分の目指しているスタイルとは別でもよいのですが、どんな絵が好きですか?

いわゆる萌え絵にはあまり興味がなく、どちらかというと風景込みの方が好みです。元々映像をやっているのもあり、一枚絵よりは映像のワンショット的なものが好きで、自分で描く時も映像の一部を切り取っているようなイメージなので、アプローチの仕方が絵描きじゃないとよく言われます。あとは上手いデフォルメがされているものやアイディアが光っているものなどに惹かれます。古典的絵画だとマグリットやデ・キリコなどの表現、それ以外だとメビウスなどのフランスのバンド・デシネや映画のポスター、プロパガンダ画集なども好きです。

——好きな作品(イラスト以外の漫画・アニメ・小説・映画などでも)について教えてください。

漫画だと『風の谷のナウシカ』や諸星大二郎作品など、癖のあるものが好きですね。映画もジャン=ピエール・ジュネ監督の『ロスト・チルドレン』やターセム・シン監督の『落下の王国』など、世界観が独特なものが好きです。ゲームだと『ICO』や『ワンダと巨像』、『ゼルダの伝説』シリーズ、『MOTHER』シリーズ、『UNDERTALE』、あと『塊魂』が大好きですね。

加藤オズワルドインタビュー画像3

——イラストを描く前のアイデアの出し方で心がけていることについて教えてください。

とにかく数を出すことですね。最低でも100は考えようというつもりでスケッチを重ねます。だいたい100出る前に見つかることが多いです。あとは常にイラストに使えるかどうかを考えながら景色や作品を見たりしています。

——上達するために心がけていることについて教えてください。

僕としては上達や成長は結果でしかないと思っているので、心がけていることはないです。ただ周りの絵描きに聞いて明らかに共通しているのは数を描いているということなので、それは大事なんだなと思います。デッサンや色使いなどはやっていくうちに必要が出てきたら勉強すればいいし、人によるのかもしれませんが、上達しようとして描くとつまらないから好きなように描けばいいと思っています。上達することにモチベーションを感じる人もいると思うので、自分がどちらのタイプなのかを見極めてから何かした方がいいのかなと思います。

——イラストのお仕事の際に心がけていることについて教えてください。

コミュニケーションですね。クライアントが欲しがっているものをそれ以上のクオリティで出すことが理想なので、どういうものを欲しがっているのか、相手がどういう人なのかをすごく気にします。言葉では「いいですね」と言っていても内心では違ったりすることがあるのを、文面やオンラインでやるとタイムラグで間がずれたりするので、なるべく対面でやりとりをしながら見極めつつ、相手が求めているものを拾おうとしています。その上でイメージの共有のために流行っている作品を見たりするようにしています。

——イラスト制作のちょっと大変だった経験や悩んでいたことなどあれば教えてください。

大変だったのは、最初の頃は名指しで仕事は来ないのでとにかく量をこなすことでした。一月に80カット描いたこともあり、物理的に大変だったことが多いです。悩みとしては、思いつく端から描いていくので、絵を描きたいけど描きたいものがないことがあるというのですかね。あとは自分の絵に個性がないと思っているので、わかりやすい絵柄がある作家を見ると羨ましいなと思います。絵柄に自信がないので、癖のある変化球でなんとかしようとするのがスタイルかもしれません。

——今後の目標や挑戦したいことについて教えてください。

今は漫画を描くことにはまっています。今までも描いてはいたけれど仕事にしようとは思っていなかったのですが、できるなら仕事にしてみたいと思っています。世に出る形にはあまりこだわりがなくて、最近では絵本もありかも?と思っています。

加藤オズワルドインタビュー画像4

作家になりたいのか、クライアントワークをやりたいのか

——最後に、これからイラストレーターを目指す人へのアドバイスをお願いします。

進路について相談されることも結構あるのですが、作家になりたいのかクライアントワークをやりたいのかという部分を割とみんな混同していると思うので、そこをはっきりさせた方がいいと思います。元々イラストレーションは図案など、人から頼まれたものを絵にするという仕事だったのに、最近はそれがすごく曖昧で作家性を出している方が偉いという風潮になっていて、それが顕著なのがいわゆる美少女系のコンテンツだと思うのですが、それって結局個の力とクライアントの要望や時代の背景がマッチして成立しているから強いということなんだと思います。
最近のイラストレーター界隈で出てくるのは人手不足という話題で、女の子を描きたい人は多いけど、絵として完成するイラストを描ける人が少ないという話を広告代理店の人から聞いたりもするので、そういう方向を目指すと仕事はいくらでもあると思います。個を出して売れたいのであれば画家のように生きていくことを覚悟するしかないですが、絵で食べていきたいならクライアントワークができるイラストレーターとしての研鑽を積んでいった方が未来があるんじゃないかなと思います。承認欲求を得たいだけなら別の仕事でお金を稼いで発信していくというのもありですし。ちなみに、僕は絵が得意だから仕事になっていますが、絵を描く理由は承認欲求以外にないです。

——本日のインタビューは以上になります、どうもありがとうございました!

加藤オズワルドインタビュー画像5
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