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葉山えいし

葉山えいし

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書籍イラストやキャラクターデザイン、ソーシャルゲームのイメージイラストなど、商業イラストレーターとして精力的な活動をされている葉山えいしさん。今回は葉山さんに、FireAlpacaを使用してイラストを制作していただきました!インタビューでは、商業イラストレーターとしての心得についてたくさんお話しいただいております!

「薔薇と針」葉山えいしイラスト

「薔薇と針」

「薔薇と針」
メイキング

ラフ

「薔薇と針」葉山えいしイラスト ラフ
「薔薇と針」葉山えいしイラスト キャラ設定

今回はキャラクターを中心としたイラストのため、顔まわりだけを切り取っても見栄えが良くなるような配置にしました。男女の双子キャラのデザインは、ある程度の共通性をもたせつつも全く同じにはならないように工夫しています。

線画

キャラの顔周りは最初に線画を起こしています。体は「レタリングマジック細」で下描きをしてから、「dp-フェード丸筆」で線画を描いていきます。線画を整える際は消しゴムではなく、透明色の「dp-フェード丸筆」を使います。

主に使用したブラシ

「レタリングマジック細(カスタム)」
「薔薇と針」で主に使用したブラシ「レタリングマジック細(カスタム)」
「dp-フェード丸筆」
「薔薇と針」で主に使用したブラシ「dp-フェード丸筆」

キャラ着彩・加筆

パーツごとに塗り分けをし、「水彩フィルバート」でおおまかな影を描き、カスタマイズした「うす墨インク溜まりペン」で細かく描き込んでいきます。影にグラデーションを入れたいときは大きめ「エアブラシ」で暗い色を重ねます。パーツを塗り終わったら、線画の上にレイヤーを作成し、髪のハイライトや毛の流れ、細部をカスタマイズした「うす墨インク溜まりペン」で加筆していきます。

主に使用したブラシ

「水彩フィルバート」
「薔薇と針」で主に使用したブラシ「水彩フィルバート」
「うす墨インク溜まりペン(カスタム)」
「薔薇と針」で主に使用したブラシ「うす墨インク溜まりペン(カスタム)」
「エアブラシ(カスタム)」
「薔薇と針」で主に使用したブラシ「エアブラシ(カスタム)」

背景

キャラの落ち影を乗算レイヤーに「古ぼけコミックマーカー(三角)」で描き、透明色の「dp-フェード丸筆」や「うす墨インク溜まりペン」で形を整え、その後キャンバス全体の影をエアブラシで別の乗算レイヤーに描きます。アイアンフェンスは、左右対称と集中線スナップを使って「dp-フェード丸筆」や「うす墨インク溜まりペン」で描いていきます。

主に使用したブラシ

「古ぼけコミックマーカー(三角)」
「薔薇と針」で主に使用したブラシ「古ぼけコミックマーカー(三角)」

葉山えいし
インタビュー

インタビュアー:野生のドーナツ(社内イラストレーター)
葉山えいしインタビュー画像1

——今回のイラストを制作する際に意識したことやこだわりについて教えてください。

なるべくいろんなツールを使って描くようにしました。塗りは厚塗りだけど線画の綺麗さもソフトを使う人にとっては気になる部分だと思うので、なるべく線も綺麗に活かせるように意識しました。

——今回はキャラクターも新規でデザインしていただいたんですよね。

双子キャラとして認識してもらえるように、要素を分布させるのが楽しかったです。背景のアイアンフェンスを描く時に、ちょうどFireAlpacaの「対称」の機能が噛み合っていました。絵ではシンプルに見えるものの本来は大変な作画なのですが、本当に綺麗に描けて感動しました。

——ありがとうございます!今回使ったブラシについてはいかがでしたか?

本来は塗りで使われるペンだと思うのですが、「フェード丸筆」で線画をしています。ちょっと滲んだ表現が出てくるところが良くて、カスタムして使っていました。消しながら形を作っていくことが多いので、ブラシとなるべく同じタッチで消しゴムを使いたい時は透明色を選ぶんですが、FireAlpacaのブラシは透明色でもブラシと同じタッチのまま綺麗に消えるのがありがたかったです。基本的に補正のかかり方がしっかりしていて、引きたいところに線が引けたので描きやすかったです。
塗りでは「うす墨インク溜まりペン」が「フェード丸筆」と相性がよかったので、標準より不透明度を下げ、後補正も少し弱めて使っていました。

——イラストのおおよその制作時間はどれぐらいでしたか?

塗り分けに結構時間をかけるスタイルなのですが、作画にかかった時間が10時間くらいで、構想・ラフを含めると15時間くらいです。日数としては4日くらいですかね。

どういう考え方が自分の絵をよくするのに手っ取り早いか、ヒントになるか

——次に、イラストレーターとしての葉山さんについての質問です。普段の作業環境を教えてください。

ゲーミングノートPCをメインにwacomの「Cintic22HD」の液タブを使っています。資料はスマホで見るか、液タブの左側1/4くらいのスペースを使って表示しています。結局画面の全域をお絵描きスペースにしても、手を動かす範囲や目の移動が大変なので。ディスプレイは液タブのみでノートPCの画面は映さず、真っ暗な画面に自分を鏡のように反射させて手のポーズやデッサンの確認をしたりしています。

——PCはソフトを起動させるために走らせているだけなんですか?

はい、ずっとこのスタイルで。前にPCを変えたら画面がノングレアになってしまったので、わざわざグレアシートを買って反射するようにしたくらいです(笑)。デスクトップPCを買えばいいのにとよく言われますが、ノートPCはそれだけで完結するし、何かあってもリカバリーしやすいのが良い点ですね。

葉山えいしインタビュー画像2

——ご自身のイラスト歴について教えてください。

デジタルイラストは小学生のときからで、親にPCをもらったことがきっかけです。絵を上げるのは恥ずかしくてやれていませんでしたが…。CGに飽きてきてアナログをやりたくなった時期もあって、コピー用紙にシャーペンで漫画を描いたりしていました。
自分の絵柄はアナログでついたと思います。デジタルは何かを参考にして学びながらやろうとするので自分の手癖100%にはならないのですが、アナログだと描きたいものを自分の絵柄でやることが多くなると思うので。お仕事をいただけるようになったのは完成度を上げることを意識するようになってからですね。

——ご自身の目指しているスタイルとは別でもよいのですが、どんな絵が好きかについて教えていただけますか?

一度でさらっと描いていないような、こつこつ作り上げていくという感じの絵が好きですね。具体例を出すと、武田日向先生の作品は、作風の雰囲気が似ていると昔フォロワーさんに教えてもらって知ったのですが、うまくなったらこうなりたいと思うようになりました。
可愛いのにめちゃくちゃうまくて、デフォルメがかかっているけどリアルを解像度高く落とし込んでいる感じがすごくいいんです。

——イラスト以外でも、好きな漫画・アニメ・小説・映画ゲームなどの作品がありましたら教えてください。

ゲーム系はBGMや演出、キャラデザがロマンとして残りますし、RPGだとゲームの中の国を旅したりすると文化や生き方が感じられるのが好きで、そうするとやっぱり『原神』も好きですね。創作者として好きなのは何にでもなれるボカロ(Vocaloid)です。いろんな文化や生き方を反映させられる存在なのにミクだってわかるのがすごいし、クリエイターとして創作意欲を掻き立てられます。

——イラストを描く前のアイデアの出し方で心がけていることについて教えてください。

「飾りたくなるような絵」を意識しています。あと、いただく仕事が版権のものが多く、公式絵として描いてほしいということでポーズ指定があることもありますが、ファンアートでもそうですが「そのキャラだからこそのポーズ」にすることを大切にしています。例としては「このキャラはおとなしい子だからここまで奇抜なポーズはしない」というような範囲がキャラそれぞれに決まっていると思っているので。あとは公式絵とポーズを被らせないように意識しています。

葉山えいしインタビュー画像3

——絵を上達させるために心がけていることは何ですか?

常に勉強中です。専門学校などに行かず独学だったので、専門でやってきた人と差があるんですよ。やっと気づいたことが後から美術用語で言い表せることだったということがよくあって。パースとかも学ばなきゃと思ったけど分からないので、とりあえず写真5000枚くらいに自分で3色の定規ツールで線を引いて無理やり身につけました。

——5000枚はすごいですね!自分で分析しちゃうんですね。

どういう考え方が自分の絵をよくするのに手っ取り早いか、ヒントになるかを自分に合わせて身につけていくのが大事だと思います。例えばシワの描き方についても、写真を見ながら描くとうまく描けるし、どんな写真でも参考になるけど、自分の絵で描く時頭が真っ白になるので、写真をそのまま写すのではなく「自分の絵で表現するならどうするか」を噛み砕いて落とし込むことがすごく大事だと思います。

——イラストの仕事の際に心がけていることは何ですか?

「ちょうどよさ」ですね。「これぐらいが欲しい」というクライアントの要望に合わせるようにしています。全員が全員完成度が高いものが見たいわけではないと思うので。
全部がすごいものよりも「断片から見える魅力」に気を配った絵を描きたいと考えています。見る側も作品にこめたもの全てに気づくことははなかなか難しいですし、要点を絞ってたくさんの枚数で描く方が「次は何を見せてくれるんだろう?」と期待させて次に繋がるようにすることができると思っています。
一方で、単なるスタイルの違いで意図的におさえているところを手抜きだと思われてしまわないように、素の表現力を上げていくことを常に意識して練習しています。

いいものを作るようにしていれば、見てくれる人はちゃんと見てくれます

——イラスト制作の際のちょっと大変だった経験や悩んでいたことなどがあれば教えてください。

自分の絵はムラがあるので、同じようなクオリティで揃えるのが不可能ではないけど大変ですね。あとは趣味絵でもラフの段階で「見ていて落ち着かない」という感覚に陥ってしまうと、違和感の原因がどこにあるのかを探すのが大変で、普段の勉強が必要だと感じます。

——そういう時に、「納得するまでは絶対に先に進めない」という方と、「とりあえずこれでいいや」で進めてしまう方がいると思うのですが、葉山さんはどちらでしょうか?

納得せずに「もういいや」で進めてしまうと結局後から直すことになるので、自分の目が冷静に判断できるようになるまで非公開で寝かせておくようにしています。原因をつきとめて改善できるとやっぱりお気に入りの絵になりますね。
どの絵も一発でできているのではなく毎回悩んで描いているのですが、その中でも、時間が経つと昔はできなかったことが今はできていると自覚するタイミングがあったりするんです。いつかは一発で描ける強い神絵師になりたいですね。

葉山えいしインタビュー画像4

——イラストレーターとしての今後の目標や挑戦したいことなどがありましたら教えてください。

創作キャラのフィギュア化の監修をやってみたいです。強欲なので15体くらいは監修したいですね(笑)。
あとはあまりやったことがないので男性キャラのデザインの仕事もしたいのと、これは自分の手帳の野望のコーナーに書いてあるのですが(笑)、ポケモンの仕事がしたいです!

——野望がいっぱいで良いですね!最後に、これからイラストレーターを目指す人へのアドバイスがありましたらお願いします。

どんな奇抜な表現や個性的な表現でも、商品として出した時のクオリティがあるかどうかを自覚したり誰かに聞くのって難しいかもしれないですけど、そういう時は途中でも完成した後でも、「こういう仕事したい」という目標の絵を自分の絵の周りに8つ並べて、違和感がなくなるまでクオリティを上げていく。そうやって違和感のないクオリティをコンスタントに出せるようになれば絶対にイラストレーターになれます(笑)!
個性のあるなしにかかわらず、他の作品と並べて遜色がない・違和感がないかを察知する能力を育てることが大事で、そこが育っていないと「自分はいいと思うのに、なんでリテイクもらうんだろう」となってしまって仕事ができなくなってしまうんです。反応の大きさに左右されずにいいものを作るようにしていれば、見てくれる人はちゃんと見てくれます。
あとは1回描いてやめるのではなく、次に行くというのがイラストレーターとしては大事だと思います。続けると見る側も覚えてくれます。どうやったら選ばれるのか、選ぶ側の気持ちになるのが大事だと思います。

——質問は以上になります。具体的なお話をたくさん聞けて非常にためになりました。本日はどうもありがとうございました!

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