
モトジマ
バンド・デシネ作家を目指し、フルカラー漫画の制作に日々取り組んでいるモトジマさん。東京コミコン2023のメインビジュアルを担当するなど、海外風のかっこいい絵柄で活躍をされておりますが、実は2014年に開催されたFireAlpacaのイラストコンテストにてPICO賞を受賞されており、FireAlpacaの古参ユーザーという一面もあったりします…!今回はそんなモトジマさんに、ご自身の制作スタイルについてのあれこれを聞かせていただきました! (コンテストの結果発表ページはこちら!)
「Urban Inkstorm」
メイキング
ラフ

「都会的なかっこよさ」というテーマなので、白を基調としたスタイリッシュな配色と、グラフィティアート風のキャラクターを採用しました。
線画
三分割構図でキャラを配置しています。「鉛筆」で線画を描き、色を塗り分けていきます。今回は色ラフの段階で最終的なカラーバランスを決めています。
主に使用したブラシ
「鉛筆」

「motojima_brush(カスタムのブラシ)」

キャラ着彩・加筆
背景を非表示にし、ラフの線を「鉛筆」で整えながら、キャラの細部を塗り込んでいきます。この段階では着彩レイヤーを一つに統合し、厚塗りの要領で塗っています。
主に使用したブラシ
「鉛筆」

背景・仕上げ
背景を表示し、細部を塗り込みながら、エフェクトなどを描き込んでいきます。煙の表現には「カスレ毛筆」を使っています。
主に使用したブラシ
「鉛筆」

「カスレ毛筆」

モトジマ
インタビュー
——まず、FireAlpacaについての質問です。今回FireAlpacaを使ってみていかがでしたか?
直感的に使えて使いやすかったです。無駄がないというか、ブラシもいっぱいありましたし。私はたまにグリザイユで描くことがあるのですが、グラデーションマップの種類が多くて良いなと思いました。実は10年以上前にFireAlpacaを使用してイラストを描いたことがあるのですが、そこからかなり進化しているなと感じました。
——ありがとうございます! あってよかった機能やおすすめの機能などはありましたか?
グラデーションマップ以外にも、描くための最低限の機能が全部揃っているのがよかったですね。あとは合成レイヤーの処理の仕方というか、フォルダを合成しなくてもフォルダそのものに合成をかけられるのがよかったです。
——こういう機能があったらいいな、と思った部分はありましたか?
3Dパース機能が少し難しかったのと、キャンバスの外に線を引くことができたらありがたいと思いました。パースを使った背景を描く時に、キャンバス外の人物の足の位置などがわかるとパースをとりやすくなるので。

——次に、今回のイラストについての質問に移らせていただきます。今回依頼したイラストを制作する際に意識したことやこだわり、こめた想いなどについて教えてください。
「都会的」というテーマをいただいたので、白基調の近代的なイメージで、キャラクターはグラフィティアート系のキャラクターがすぐに浮かびました。構図については今の自分のテーマとして「漫画の表紙っぽく描きたい」というのがあって、「誰が主人公で何をしているのかというのが伝わる絵作り」を意識しました。東京コミコンなどのイベントに参加しているとカバーアートを描く人が多く、そういうイラストを描けるようになりたいと思っています。
——今回はどんなブラシを使ったのかについてお話しいただけないでしょうか?
塗りをする時に輪郭が少しボケたブラシが使いたかったので、デフォルトの「ペン」をベースに自作しました。背景の煙の部分はデフォルトで入っていたテクスチャ系の「カスレ毛筆」を使いました。
——おおよその制作時間を教えてください。
合計9時間です。この絵は1枚目の案が気に入らなくて描き直した2枚目の案なのですが、1枚目の時間も含めると合計19時間になりますね。

自分がいいなと思ったイラストを分析して、カテゴリ化する
——イラストレーターとしてのご本人に関する質問に移らせてせていただきます。まず、普段の作業環境について教えてください。
液晶タブレットはXP-PENの「Artist 15.6」を使ってます。いつも使ってるソフトはClipstudioPaintで、左手デバイスとしてtabmateを使っています。 普段はトリプルモニターで、1つ目は先ほどの液タブ、2つ目は資料探し用、3つ目は作業中の動画視聴用として使っていて、実況配信を観ながら絵を描く事がほとんどです。 また、最近は漫画の執筆ばかりしているので、すぐに手が伸ばせるように机の上には脚本系の本が置かれています。
——イラスト歴(絵を描き始めたのはいつ頃か、今のスタイルになるまでの変遷など)について教えてください。
幼稚園の頃から、ポケモンなどの絵をトレースするところから始まって、小中高とずっと描いていました。高校の時に、はあと先生の作品に出会ってデフォルメの効いたデザインや独特の描き方に衝撃を受け、自分の描き方もシルエットを強調したものになっていきました。あとは大学か専門学校かで迷っていた時に、体験入学で先生に「カメラワークがなっていない」と指摘を受けたことで、カメラワークを意識するようになりました。海外風やアメコミらしさは、中野ブロードウェイで見つけたフィリピンの作家さんのフルカラーの合同誌に衝撃を受けたことがきっかけだったと思います。
——自分の目指しているスタイルとは別でもよいのですが、どんな絵が好きですか?
いろいろあって迷うのですが、空気遠近法やコントラストなどの技巧がうまく使われていたり、見せたいところが明確で基本的なことができている絵が好きです。あと、ダイナミックな人体パースが効いている絵は3Dモデルを素直に使うとできないので、これがうまくできている絵は作者さんの技術の高さが現れていると思います。その他にも、青山剛昌先生のカラーイラストのようなストーリー性のあるイラストや、長野拓造先生やはあと先生のような、キャラクターの特徴をシルエットで捉えている絵が好きです。
——好きな作品(イラスト以外の漫画・アニメ・小説・映画などでも)について教えてください。
漫画は山本直樹先生の『ビリーバーズ』や『レッド』など、映画は『時計仕掛けのオレンジ』や『フランス組曲』などのような、社会派の作品が好きですね。ゲームは『イナズマイレブン』や『極限脱出シリーズ』、『逆転裁判』など、キャラクターに焦点を当てたものが好きです。あとはFPSの『レインボーシックス シージ』を何年も毎週やっています。
——イラストを描く前のアイデアの出し方で心がけていることについて教えてください。
普段いろんなイラストを見ることが一番かなと思います。「こういうイラストを描かなきゃいけない」となったときに、昔見たイラストを思い出して参考にするようにしています。例えばパレードの絵を描く時に、パレードそのものの絵を思い浮かべるのではなく、構図や色などを思い出してそれに当てはめて描くようにすることで、ありきたりでない絵を描くことができるのではと思っています。
——上達するために心がけていることについて教えてください。
自分がいいなと思った、参考になると感じたイラストを分析して、惹かれた部分をカテゴリ化することを心がけてます。そうすることで自分が絵を描いてて苦戦した時に、すぐ参考になるイラストにアクセスして技法を取り入れることができます。いろんな人の技法をインプットしていって、組み合わせたものが自分の個性になるんじゃないかと思ってます。あとは資料を見る、集めてから描くことを意識するようにしています。今回もスプレー缶は実物を見ながら反射具合などを描いています。

「自分のブランドはどこにあるのか?」というところを常に悩んでいます
——イラストのお仕事の際に心がけていることについて教えてください。
まずデータ管理の部分はすごく大事だなと思っています。線と色が明確に分かれている描き方ではないので、どこに修正が入っても対応できるようにレイヤーを管理しています。あとは自分の中での課題でもあるのですが、「自分にどのようなイラストが求められているのか」という部分を意識して制作したいと考えています。
——イラスト制作のちょっと大変だった経験や悩んでいたことなどあれば教えてください。
「自分のブランドはどこにあるのか?」というところを常に悩んでいます。クライアントさんにとっての「モトジマさんの絵」でイメージされるような作風や色使い、スタイルといったものを自分の中でまだ把握しきれていなくて、何を武器やアイデンティティにすべきかを模索してます。飽き性で描き方を変えてしまうこともあるので、変えても自分の絵として通用するようになりたいですね。
——今後の目標や挑戦したいことについて教えてください。
現在挑戦中なのですが、フルカラー漫画を描き切るということです。ストーリー性のある絵やカメラワークを意識したダイナミックな構図を描くのが好きなのですが、じゃあそれを漫画として表現すれば今まで培ってきた構図力などを活かした見応えのあるものが出来るのではないかと思い、2024年から漫画制作にシフトして力を入れてます。でも漫画は絵だけでは成立しないので、合わせて脚本制作の勉強をしていたりします。
——最後に、これからイラストレーターを目指す人へのアドバイスをお願いします。
「このジャンルを専門にやっていく」「こういう色使いでやっていく」というのを決めておいた方がイラストの仕事は受けやすくなると思います。現在はSNSも充実していて情報も得やすいので、若いうちからいろんな作品を吸収して幅を広げていった上で、そこから取捨選択して自分ならではのイラストを作り上げていくと良いと思います。その際に「なんでも好き」や「好きなものが分からない」で闇雲に描いてしまうと個性が付きづらくなると思うので、自分の好きな絵を見極めておくのが大事かなと思います。
——本日のインタビューは以上になります、どうもありがとうございました!
▼モトジマさんのカラー漫画作品も少しだけ見せていただきました!▼

